『マルモイ』の話
でも、もしあのまま日本の占領が続いていてドクジンが大きくなって、賢いがために一定の役職を得るようなことがあったとしたら、「身の処し方としての『愛国者』しぐさ」がいつか心身に侵食してしまうこともあったのかな。それこそ会長の父のように。
ドクジンが、学校で日本人の大人に言われているであろう「バカ野郎」を妹に使っているのもつらい。無意識のすりこみかもしれないし、「こうやって日本人に脅されるのだぞ」と伝えるために意識して使っていたのかもしれない。どっちにしてもつらい。
とかいろいろ考えて、私はドクジンにいつも感情移入してしまう。
単純に、あの1943年から妹を守ってきた苦労を考えるだけでもつらいし。
ユ・へジン演じるキム・パンスの愛嬌には作中の人物だけでなく見ているこちらも好ましく思うし、それあってこそのこの映画だけど、ドクジンは父の分まで深刻に悩むパートを背負わされているようにも見えて。
ラストシーンで出てくるスンヒが、小さい頃と同じくほがらかで暗さを感じさせないのがいい。パンスの明るさをしのばせるし、ドクジンがんばったねと思わせるし……。