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『夜の大捜査線』観た

見知らぬ街で、殺人事件の容疑者と間違えられ逮捕されたのは殺人課の敏腕刑事だった。嫌々ながら事件捜査に協力する…と定番のサスペンスなのだが、刑事は黒人、舞台は60年代の人種差別の根強い南部のミシシッピ州、と途端に人種差別の緊張感が張り詰める。ユーモラスさに緊張の陰影がつき、とても面白かった。

数々の差別に努めて知的にクールに振舞う刑事を体現するシドニー・ポワチエの抑制された演技。北部の洗練さをひとり貫く。その奥に煮えたぎる思いが見え素晴らしい。躍起に捜査する中で「すっかり白人だな」と掛けられる声に、こちらもはっとする。

彼と対立しつつもバディ関係に陥ってしまう強烈に横柄な白人警察署長、演じるロッド・スタイガーがまた素晴らしく。じわじわと黒人刑事の能力を認めざるを得なくなる感情の揺らぎが絶妙。可愛げすら感じる。しまいには疎外された者同士の心が交錯する一夜、友情でもない寄り添い、という大好物な場面まである。偏見が消えないのがリアリティあって良い。数日の捜査で変わるほど人の心は単純ではない。

それでも、ラストの素っ気なくも、一時的であっても心の通ったやり取りに、爽やかさを感じ笑顔になる。

『夜の大捜査線』他に

緩めの捜査の裏で、黒人への憎悪がじわじわ増していくように感じられるのが怖かった。時間経過がゆっくりに感じられるので余計に。ただ町にいるだけで襲われるのが本当に怖い。とんでもない社会だったのだなと改めて思う。

署長の、バージル個人の能力や差別を理解してはいるが認められず傲慢な態度を変えられない、けれども厳しくも当たりきれず、なんとなくいい人寄りになっていくモヤモヤ、本当に面白い。こういうの大好物なので。

バージルは夜汽車を降りてくる所、駅の待合所の全身登場シーンからもう格好良い。

誤認逮捕された男と打ち解ける場面がかなり好きだ。コミュニケーション能力に長けてるのと、人間的魅力もあるのが見て取れて。この場面でもそうだけど、ほとんど渋い表情なのに何度か破顔するところがあって、それもまた良い。
殴られたら即殴り返す気合と反射神経と不屈の精神もいいな。あの場面普通にびっくりした。

巡査のキャラもなかなか面白かった。調子がいいのに、変に強がりで反抗心があるの。めんどくさい奴だけど。

綿花のプランテーションの風景は複雑な気持ちになる。

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