>>幼児期には、自分の名前や愛称を使う子どもが多い。ところが、小学校に入学する頃には、「わたし」(女子の場合)と「ぼく」(男子の場合)に変えるように指導される。
>>男子には、「○○ちゃん(くん)」から、次第に〈少年性〉に印づけられた「ぼく」を経て、大人になったら「わたし」も時には使うというゆるやかな道筋が用意されている。一方、女子は、幼児期の「○○ちゃん」から、「わたし」へといっきょに〈大人の女性〉と同じ自称詞になる。つまり、今ある自称詞には、〈少女性〉に印づけられたものがないのだ。
>>少女が「うち・ぼく・おれ」を使うのは、決して男のようになりたいからではなく、日本語に、〈子ども〉でも〈女〉でもないアイデンティティを表現することばがないからなのだ。