フォロー

新国立劇場ボリス・ゴドゥノフ。トレリンスキの演出は好きなタイプの演出。ムソルグスキーの音楽とプーシキン原作の台本が堅牢なのでサイバーパンクで揺さぶって21世紀に寄せて宗教と物語に翻弄される人々を描く舞台にしても破綻がない。聖愚者と病身のフョードルを融合させ、子殺しの君主であるからこそ率先して規範的な信仰を示さなければならないボリスの弱みを際立たせる演出がまず雄弁。若々しい美声の高僧ぶりで、歴史を書き、物語によって人を導く特権性とそこに由来する悪を手を汚さずに体現するピーメンのラスボス的存在感が圧倒的で、ピーメンが出てくるとボリスもシュイスキーもかなりの悪なのに小物に見えてしまうし、ぴかぴかのスペースオペラ戦士風黒甲冑を着たにせドミトリーに民衆が熱狂するエピローグにも説得力が増し加わるし、後ににせドミトリーとなる修道士グリゴリーに「後継者」の引導を渡す場面が不気味に静かなのが後からじわじわ効いてきます。大野和士さんと新国立劇場合唱団と都響にも大拍手。
ぜひトレリンスキの演出で《炎の天使》《スペードの女王》《マクベス》を新国で見たいです。

ログインして会話に参加
Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。