まあ、それでも出会いひとつで何もかも変わってしまう女も男も知ってはいるし、ベッドの中、キザな台詞も吐けないわりにそれなりの作法は心得ていて、嫌な思いをさせられたことはなかった。歪といえば歪。その歪さが魅力だった年下の男の子。
嫌な思いにさせるのが腹立たしいほど得意な奴もいたので、尚更若さに似合わないが、それを習慣にさせた以前の相手は見事なものだと感心したっけ。
あの回数は少なかったけれど、そこそこ濃かった何度かの夜、あたしを見ていた時のギラギラ輝く目の光が変わらないまま年老いてくれていたらいい。
自分では無いものを見ていることに安心しながら、やけに優しい動きに浮かぶように身を任せた。
月の光の届かない部屋で。