志度晶を一時飼っていたおねえさんの独白。続かないので供養。 

料理を任せてみれば、案外ちゃんとしたものを作るし、掃除や洗濯にしてもたたみ方や掃除機のかけ方に対して腹の立つようなこともなく、同居人というには生活の時間がずれていて、顔を合わせる方がまれではあった。
まあ、俗な言い方をすれば、いわゆる男女の仲ではあった。
たしかに、志度晶という男を憎からずは思っていて、ほんのわずかの間ひとつ屋根の下に暮らした。
それは、懐かない野良猫が気まぐれに軒先を借りたようなものだっただろうと、書き置きひとつ残さず消えた幻のように、こんな雨の夜にふと思い出す。
今頃はどうしているだろう。放っておけない雰囲気と、妙に人懐っこいところを持ち合わせた上に、そこそこの容姿の持ち主だった。あれに磨きがかかっているなら、また誰かの飼い猫もどきの暮らしだろうか。
生活力はそれなりにある男だったから、生き方を間違えていなければひとかどの生き方をしているかもしれない。
まあ、わたしもいい歳になって、若い頃の女友達と半分同居みたいな居心地のいい毎日を過ごしているせいで、ふと若い頃を振り返ってみただけのことだ。
あの子があたしを呼ぶ時の声は案外好きだったなと、多分実際のそれとは違う声が頭のどこかに聞こえた。

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志度晶を一時飼っていたおねえさんの独白。続かないので供養。 

@Maiayano 志度さんは当然の事ながらこのおねえさんにも幸せになってほしい……。これ木更村の前と後どっちだったのかなってちょっと思いました。

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