少なからぬ日本人にとって、漢文は学習コストの最も小さい外国語ではないか。
千年、二千年前の文章でも、全体の9割がた、いや、それ以上だな、大部分は知ってる文字で構成されている。
難しさのほとんどは教養に関するものであって、文法的に難解なのではない。名詞の格変化もなければ、動詞の時制もない。その点では現代日本語よりやさしい。
漢和辞典を引きまくれば、とくに勉強しなくてもかなりの程度まで理解できるのではないか。――

と、安易にまとめてみたが、現実はそうもいかない。
宿題。次の文を訳せ。

方外之與方內,其不相及亦遠矣。穆王,方之內者也;化人,方之外者也。西方主金,金為從革,故化人之來必自西極也。物本非有身,原太虛化人造物之主也,六合所不能拘,五行所不能役,故可以撮乾坤于黍米之中,促劫運于須臾之內,綽綽然猶有餘地,至于入水火,貫金石,反山川,移城邑,變物之形,易人之慮,皆平常閑事爾。
ctext.org/wiki.pl?if=en&chapte

西方主金,金為從革,故化人之來必自西極也。――

なぜ幻術師は西の果からやってくるのか。
その理由が「西方主金,金為從革」なのだろうが、漢和辞典をめくってるだけでは解けそうもない。

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火・水・木・金・土の五行説で「西」が「金」に対応していること
同じく「皮毛」(=革?)が「金」に対応していること
ja.wikipedia.org/wiki/五行思想
――五行思想 - Wikipedia

これらのことから、幻術師が西からやってくる理由を説明しているのだとしたら、五行説が信じられていた時代ならともかく、今となっては面白いものではない。
古代中国における西とは異域のこと。具体的には、ペルシャ、インド。
そちら方面から怪しげなやつがやって来た、という事実めいたところだけ見ておきたい。

百科事典サイト「百度百科」から、幻術研究書『鵝幻彙編』の項の冒頭記事。
意図がわかりにくいが、要約のつもりだろう。

中國的變戲法(又稱幻術、魔術)到底起於何時,已難考證。《列子·周穆王篇》載:“周穆王時,西極之國有化人來,入水火,貫金石,反山川,移城邑;乘虛不墜,能實不礙。千變萬化,不可窮極。”唐代雜技和幻術空前繁榮,幻術節目中的“走火術”、“種瓜”、“植樹”,不但流行於本土,而且還傳入了日本。
baike.baidu.hk/item/鵝幻彙編/95606

『列子』周穆王篇を引用したのは、そのへんを最古の伝えと見たためか。
唐代に幻術が大流行した、そのうちでも代表的な走火術、種瓜、植樹は、日本にも伝わったとあり。幻術そのものが日本に伝わったのか、それとも幻術譚が伝わったのか。後者だろう。果心居士などもその例か。

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