📗宇月原晴明『安徳天皇漂海記』
馬伯庸『両京十五日』の解説で鄭和さん関連図書として『廃帝綺譚』があげられていたので、そろそろ潮時とぽちったついでに前段(というか本編?)の本書もぽちりました。宇月原晴明作品は、デビュー作の『信長:あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』以来約四半世紀ぶり。(え?)
安徳帝と源実朝とマルコ・ポーロと南宋最後の少年皇帝趙昺とを高丘親王航海記の夢でつなぐ流離譚といった趣き。『信長〜』はとても面白かったけれども、何かの濃い原液みたいで読みづらかった印象がうっすら残っていたのだが、本作は薄いというのではなく、うまい具合に醸された清酒のようなさらさらした味わいで、とても読みやすいのが意外だった。参考文献が沢山あげられているのも良き。実朝関係と宋元関係の本が多い中に布石みたいにルイーズ・リヴァシーズ『中国が海を支配したとき:鄭和とその時代』が紛れ込んでいて、思わずにやりとしてしまった。『廃帝綺譚』も読もう。
https://www.chuko.co.jp/bunko/2009/01/205105.html
『安徳天皇漂海記』に引き続いて『廃帝綺譚』を読み始め、最初の短編(元朝最後の皇帝トゴン・テムルの話)をふんふん読み進めて2話目に来たら冒頭から鄭和が出て来て、最後までひたすら鄭和の話だった。幸福な人生に描かれていて良かったですねの気持ち(これまでの登場人物の中で一番しあわせな人なのでは)。自分が書くとしたらこういうアプローチにはしないな、というのも強く感じたけれども…(皇統だとか主従関係を、既定事実というかブラックボックスというか、無色透明で自明の駆動装置として使うのはだいぶ異論がある)
まだ残り2編あるけど、年度末に頭をかじられてヘロヘロなので、今日はもう寝ます💤