月村了衛『香港警察東京分室』(小学館)読了。
shogakukan.co.jp/books/0938668
 
現代が舞台の警察小説だが、ニュアンス的には「機龍警察」シリーズに近い。ほぼ「〈機龍〉が出てこない〈機龍警察〉」といった印象。SFが苦手で「機龍警察」シリーズを避けている人がいたら、こちらのほうがいいかも?
 
「機龍警察」に登場するのが香港系の幇なので、いずれ月村さんは本格的に香港関係の話を書くのであろう……と思っていたので、その予想が見事に当たってうれしい。香港警察は歴史的にいろいろと複雑な背景をもっているので、小説にはもってこいの題材。
 
日本と香港の警察官が合同捜査する話だが、ごく単純な仕事仲間の友情物語にはならないところが月村作品らしくて良い。国家権力のもとにある警察内部の争いも相変わらずどす黒い。その中で主人公たちの信念や矜持が光る。
(→続く)

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香港デモという政治的に難しい題材をうまくエンターテインメントに仕上げている。見事なアクション描写、読者をつまづかせない物語展開。ああ、面白かった。週末に美味しいお菓子とコーヒーを片手に、わくわくしながら読むのにぴったりの作品。
特筆すべきは日本側の捜査チームのリーダー・水城真希枝警視で、気の強い若年の女性リーダーではなく、「こういう、おばちゃん警視を待っていた!」と快哉を叫びたくなるような人物造詣。今回は、水城警視を愛でるためにある作品と言ってもよい。
 
たぶんシリーズ化されるだろうから、これからも追いかけたい。その中で、登場人物全員の心情がどんどん掘り下げられていくのでしょう。香港という土地そのものも、ぜひ登場させてほしい。

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