『わたしは、わたし』ジャクリーン・ウッドソン/作
さくまゆみこ/訳
吉實恵/装画
読了。ヤングアダルトコーナーにある字の大きい本です。児童書が好きなので(別にたくさん読んでいるわけではないが)定期的にひょいひょいと手に取っています。思春期のこどもに向けられた本たちはいつもやさしい。
タイトルからアイデンティティの内容なのかなと思っていたら、『証人保護プログラム』が話の中心にあるものだった。日本での出版は2010年。BLMが「最近のアクション」ではないことを改めて思い知る。証人保護プログラムのことはほぼ知らないと言ってよかったのだけど、「これが“保護”なのか……」とやりきれない思いになった。
物語としては主人公の年齢に等身大のものであって、アメリカでの人種差別や制度の問題ではなく、存在を奪われたその先で「自分」と付き合っていく過程を描くものだった。姉の姿勢が本当に綱渡りのように切迫していて胸が苦しい。主人公よりも年齢が上なぶん、見えるものが多かったのだと思う。フィクションだとは知りつつも、未来を願ってしまった。