『すでに起こった未来』
P.F.ドラッカー著、上田敦夫他訳、ダイヤモンド社 1994年11月発行
未来予想はできない。しかし社会や経済における出来事とそれがもたらす変化にはタイムラグが生じる。少子化が進むと学校の入学者数が変化し、その十数年後には労働力人口にも波及するように。ドラッカーはそういった変化を「すでに起こった未来」と呼んだ。
"重要なことは「すでに起こった未来」を確認することである。すでに起こってしまい、もはやあとに戻ることのない変化、しかも重大な影響力をもつことになる変化でありながら、まだ一般には認識されていない変化を知覚し、かつ分析することである。"
40年以上にわたって書かれた論文集。
ドラッカーが日本画マニアなのはよく知られているけど、本書には「日本画に見る日本」という論文も収められている。日本画を通して日本の社会、国体、特性、精神を論じている。昭和の日本が体現していた日本文化のアドバンテージの数々がそこにある。ドラッカーが日本的な日本に期待していたのがわかる。残念ながらそれらの多くは失われてしまったけれど、日本社会の本質はあまり変わらないのかもしれない。また、西洋画は幾何学であり、中国画は代数学であり、日本画は位相的だ、という指摘はなかなか興味深い。