吉野靫『誰かの理想を生きられはしない』読んだ 

性別変更の法律を作るとき、国会の多数派の理解を得る必要があって、変更の条件として「子なし要件」「手術要件」が設けられた。
そうすることで取り残される人たちが出てくるけど、法律がなければ皆でアングラな状態を続けなければならない。附則で「x年後の見直し」が入っても、成立時ほど議題にならない。

そんな法律成立時の葛藤と、置き去りにされる人々の事を考えながら読んだ。

吉野靫『誰かの理想を生きられはしない』読んだ 

"「逆の性」への同化のニーズを明確にしている当事者は特例法によって救済されたが、それ以外の指向を持つ当事者は同法から除外される存在となった。特例法の恩恵にあずかることのできる当事者と、そうでない当事者との間には温度差が生じ、擬似的な対立状況が生まれてしまった。"

『誰かの理想を生きられはしない』

吉野靫『誰かの理想を生きられはしない』読んだ 

"当事者の実態に見合わない要件がついても、立法を急ぐ理由があった。特例法成立をめぐって与党と野党が対立した場合の可能性を、上川は三つ挙げている。ひとつめは、可能性は薄いものの強行採決。二つめは、実質的な棚上げと同様の「継続審議」。最後が、審議が完了しないまま時間切れとなった場合の自動廃案である。"

『誰かの理想を生きられはしない』

吉野靫『誰かの理想を生きられはしない』読んだ 

この本を読んでいて思い出したのは「普通教育機会確保法」が成立したときのこと。
元々の案では「多様な教育機会確保法」という名前だったけど、成立を目指す中で「多様な」は消えた。そして「かわいそうな不登校の子を支援しましょう」という性格のものになった(※雑説明)

フリースクールは法律の支援の対象になるけど、オルタナティブスクールや外国学校は不登校の子を受け入れるための機関じゃないから対象にならない。
学校外の場も認めていくことで(健常の)不登校の子は助かるかもしれないけど、障害のある子供は「学校では受け入れられないのでよそへ行ってくださいね」として排除が強まる可能性もあった。

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私はこういう法律ができるとき「不十分でも今できる一歩を」と考える方だけど、でもそれは社会の多数派にぎりぎり「理解」される側だからできる考えなのかもしれない。

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