能登半島の惨状を前に「どうせ復興できないのだから廃村してしまえ」という暴言が名案のように語られる現状を前に、1970年代後半に『蒼茫の大地、滅ぶ』を執筆した西村寿行は慧眼だったんだな、と苦々しくなる。
大陸から飛来した蝗の大群を前に日本政府が僅かな災害対策予算しか組まない、という展開は何処か現実の政府を彷彿とさせる。
業を煮やした青森県知事は東北一帯の独立を宣言し、難民となった東北民に向けて演説する。その怒りの言葉は地方出身者なら、程度の差はあれども胸に刺さるのではないだろうか。
明治以降ずっと富を収奪され、政策の矛盾に伴う損害は押し付けられ、地方出身というだけで蔑まれる歴史……
この小説は長らく絶版となっていたが東日本大震災の後に、仙台の出版社・荒蝦夷によって再版された。
この歴史もまた、我々に問いかける。

『蒼茫の大地、滅ぶ』
ja.wikipedia.org/wiki/蒼茫の大地、滅ぶ

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自分は高校生の時に地元の図書館に収蔵されていた漫画版を読んだのだけど、衝撃を受けたのを覚えている。
このままここにいては夢が叶わないことを感じ始めた年頃だった。
都市部に出ないと進学も就職もままならないことは祖母や母、歳上の従姉妹たちの姿で学んでいた。
そして、それは仕方ないことだと思っていた。
地方に生まれたら死に物狂いで都市部に出なければならないと当たり前のように思っていた。
何故なら地方だから。
若者にありがちな都市部への憧れと内面化された地方蔑視、地方を出られない/出ない人を見下しつつ出られなかったらと怯え、出られそうな自分への選民思想……それが如何に下らないか、中央政府を糾弾する登場人物たちに突きつけられた。
時は流れ、私は結局地方に帰らない道を選んだ。
両親も親類も誰一人「帰って来い(🟰定住しろ)」とは言わない。
「帰って来るな(🟰ここでは暮らせない)」と言われ続けている。

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