R.フランクリンー盗まれた栄光

ホブズボーム、そして「ダークサイド of DNA」で知られるR.フランクリン(1920生)が、ユダヤ人、女性のケンブリッジ第一世代。

「反ユダヤ主義」に関しては、夫がユダヤ人(レナード・ウルフ)であったヴァージニアの小説・テクストにも「反ユダヤ主義」的な比喩が多数見られます。まあ、これは当時の一般的な「ユダヤ」イメージであって、ナチスのような「攻撃的」なものではありませんけれども・・・

さて、ユダヤ人でもあったロザリンド、結晶学を専攻、X線によDNA解析を進めます。ここで同僚であったM.ウィルキンスは彼女の解析データをJ.ワトソンとともにF.クリックに渡します。

これが「盗用」・「剽窃」にあたるのか断定はできないまでも、少なくとも今日の基準では「DNAの二重らせん構造」の研究の共同研究者には名前を連ねなければなりません。

しかし、ロザリンドは1958年に死去したため、クリック、ワトソン、ウィルキンスが1962年にノーベル賞を受賞した際には、この問題は直接浮上しませんでした。

1968年ワトソンは「二重らせん」でロザリンドを「気難しく、ヒステリックなダークレディ」と中傷、それに対し友人のアン・セイヤーが1975年「R.フランクリンとDNA」で反論。

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J.ワトソン、根っからの「人種差別主義者」でもあり、2009年「黒人は人種的・遺伝的にの劣等」と発言して失脚、2019年にも同様の発言をして完全に社会的な「信用」を失いました。

しかし、このケース、単に.ワトソン個人の問題に留まりません。

近年DNA言説が新自由主義的優生学と結合して猛威を振るっています。

例えば、曖昧模糊とした「能力」をDNA、「遺伝」と結びつけることは、新自由主義的再編による「敗者」を「遺伝的劣等者」とすることと直結しています。

こうした社会的DNA言説を分子生物学者・遺伝学者が「専門家」として批判できるとは限らない。

むしろ、この点に関しては「素人」と同じ、と考えていた方が安全です。

実際、「わが社のDNAは云々」を適切な比喩、と述べてしまう「理系」の専門家、後を絶ちません。

この辺り、哲学・倫理学、そして批判理論からの「科学」言説の批判的検討、切に求められている、と思われます。

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