飯野がまだ子どもだったころ、学校に黒人の先生が来て英語を教えてくれた。初めての授業で先生は生徒全員に握手を求めて、飯野たちは異文化に緊張して、何人かは手汗を服で拭ってから握手した。
始めニコニコしてた先生は全員と握手し終える頃には涙目になってた。それから、「あなたたちは握手の前に手を拭いた。アメリカでは握手の後に手を拭く人がまだたくさんいる。私の手が黒いから」って言った。
クラスメイトが「黒いのはそういう肌の色だからで、別に手が汚れてるんじゃないのにね?」って言った。
飯野は「それ、なんか違う気がする」と思ったが、先生は少しだけ笑って、それ以上なにも言わなかった。