フェルディナンド、自分の存在や自分の感情に自信も確信も持てなかったとしても、マインちゃんのことを他の誰より理解している(※)っていう確信は多分絶対にあって、その確信の方がもしかしたら、自分を掴んで離さないような自我を持つよりも、よほど容易く信じられるものなのかもしれないなあ、と思う。
それを糸口として自分自身に至る方が、彼にとっては自然な筋道なのかもしれないな。
※前世のことをしっている、出自のことを知っている、貴族として生きている日々も知っている、本が大好きなこともそれ以上に家族が大好きなことも、能力主義的な物の考え方やお人よしなところや、ちょっと迂闊なところや、明るくて鷹揚でからっとした人柄、でも譲れないものをもつ激しいところ、すぐに人に譲ってしまうところ、実はとても寂しがりやなところ、自分に全幅の信頼を寄せてくれていること、自分を特別に大切に思ってくれていること、食べ物や飲み物の好み、不安になると後先考えずに動こうとしてしまうところ、体の弱さやその日の体調、必要なお薬の量、その他ちょっとした仕草や癖まで、とにかく何もかもあらゆること。