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フェルディナンドはあんなに悪辣であんなに手段を選ばずあんなに倫理観を括弧に入れることができるのに、マインや彼女が与えてくれるもの、もしくは彼が大切だと思う相手に属する物事に対して驚くほど素直なところがあって(今回言いたいのはアーデルベルトやジルヴェスターに対する従順さの話ではない)、それが彼の性情の中の不思議な善美だなあと思ったりする。
マインとのぎゅーを意外に嫌がらなかったり、「家族同然」という言葉をストンと受け止めて喜んだり、再会してユルゲンシュミットより大事と言われたらその言葉を信じて生きてみようと思ったり、根っこのところでごくごく素直でひねくれていない面があるんだよね。それが彼を幸せの方へ引っ張ってくれているなあ、とも感じる。

フェルディナンドのこと猛獣だなーと私は言う訳ですけど、獣っぽいのはそういうところも含めてだな、と感じる。自分の心の底まで届いた物については真っ直ぐに受け取るというか、そこに留保や屈託を見ないところがあるな、と。

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