友達に最近で一番面白かった映画は何かと聞かれ少し考えたが「TITANE/チタン」と答えた。ここ3年で劇場に足を運ぶ回数も減りサンプルは少ないが、「チタン」ははっきりと良かった。どんな内容かと尋ねられ簡易的なエクストリーム映画テラーを実践して説明したが、友達は痛そうな映画が苦手らしく、確かに「チタン」の痛そうさは異常だし、しかしこの痛みをお前たち男性は知らないだろと言われている気持ちにもなる。好きなシーンがあり、主人公がバスに乗り込むと、いかにもホモソーシャルな振る舞いをする男性客数人に、ポツンと1人乗り合わせた女性客が執拗なセクハラ発言を浴びせかけられているが、主人公がここでホモソ成敗を実行するのかと思いきや、全くそんな事はなく、すぐに静かにバスを降りる。ここで成敗ルートを夢想する自分の浅はかさや、そうした展開にいかに慣らされているかについて思う。言えなかった瞬間や何もできなかった後悔、或いは加担の自責の履歴など、生きていればヒーローだっていろいろある。「チタン」が刺激する痛みは肉体的な痛みに限らず多岐に渡り、しかし劇場を出る頃には活力が充填されていてモッシュをした日の帰りに似ている。