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井上兼雄講述『決戦下の食生活』(大日本婦人会編、国民図書刊行会、昭和19年10月)は、大日本婦人会全国各班指導者むけの参考資料として編纂されたもので、講述者の井上は理化学研究所嘱託の研究者(当時)。58頁の薄いパンフレットだが、ここに次のような一節があった。

「食べ盛りの青少年にうまい肉や菓子が与へられないで可哀さうだと嘆く母親もあるが、この決戦に米英を撃滅して大東亜共栄圏を確保すれば、南洋の珍果や、砂糖、また濠洲の肉やバターは食べ放題だから、五年や七年位芋飯で我慢させてもむしろ将来楽しい思ひ出になる位である」(34頁)

食糧事情が悪化していた昭和19年10月の段階で、「米英を撃滅して大東亜共栄圏を確保すれば、南洋の珍果や、砂糖、また濠洲の肉やバターは食べ放題」という、勝ったらこうなるドリームをこんな風に描いていたんですね。罪深いぞ。

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