ネアンデルタール人はホモ・サピエンスに勝る体力と知性をもっていた・・・ホモ・サピエンスの脳は小さいが、コミュニケーションを図るための小脳が発達していたことがわかっている。弱い者は群れを作る。力の弱いホモ・サピエンスは集団を作って暮らしていた。そして、力のないホモ・サピエンスは自らの力を補うように道具を発達させていった・・・ネアンデルタール人も道具を使っていたが、生きる力に優れた彼らは集団を作ることはなかったと考えられている。そのため、暮らしの中で新たな道具が発明されたり、新たな工夫がなされても、他の人々に伝えることはなかった。・・・こうして、集団を作ることによって、ホモ・サピエンスはさまざまな道具や工夫を発達させていった。そして、結果として能力に劣ったホモ・サピエンスがこの地球にのこったのである。(稲垣栄洋『敗者の生命史38億年』PHPエディターズ・グループ2019年,pp.191-192)