「クラインが抑うつポジションの着想にいたったのは、彼女自身が「良い母」というものを発見したこと、息子の死を悼む母の愛というものに気づいたことによるといわれている。
喪の作業が発動したのである。
実際、「抑うつポジション」の概念は、病理を示すとものというよりは、治療論的・回復論的な方向性を持っている。
それは対象が修復可能であることを示し、「償い」という力動概念に結実した。」(内海健『さまよえる自己』pp.179-80)
戦後の日本は、端的にいって喪の作業に失敗したといえるのだろう。その結果が現在の醜悪な思想・言論状況ということになる。