マーガレット・アトウッド著『侍女の物語』(斎藤英治 訳)は、司令官の邸宅に配属された侍女を主人公としたディストピアSF。
様々な環境汚染などの影響で出生率が低下した社会で、生殖機能を有する女性たちが監視・管理された生活を強いられ、権力者の子を産むことを求められる話である。
侍女が語る過去は、まるで私たちの未来の話を聞いているようにも思えてくる。
何故このような社会になったのか。持っていたものだけでなく、名前さえも奪われるとはどういう事か。物語のなかでそれらを知っていくと、これは現在の話でもあるという思いすらしてくるのだ。
これは性別に関わらず、幸福から最も遠い国での辛くて苦しい話だけれど、私は「面白い!」と思いながら読んでいた。
保護・監視・支配の厳しい規則は鉄壁だと思ったのに、やはり人間同士のことだから刻一刻と状況が変わるのが面白い。繊細に丁寧に書かれた感情や、人間関係の変化は非常に読み応えがあった。
特に女性同士で秘密を共有する時の雰囲気、これにグッときてしまう。
気付けばどの立場の女性たちにも「なんだか分かる」と親近感を覚えていた。友人のような、同僚のような、姉妹のような、そんな目で彼女たちを見ていた。