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以前読んだエッセイに『小銭をかぞえる』は女性読者から猛抗議が来た、と書かれていた。
それほどの具体的な反響があるなんて、どれだけ酷い男が出てくるんだろうと楽しみにしていたのだけれど、本当に人間のクズのような人が主人公でした〜!!

十年ぶりにできた六歳下の恋人との同棲について書いた「焼却炉行き赤ん坊」と「小銭をかぞえる」の二作品がおさめられている。
タイトルを読んでまずギョッとするのだけれど、実際の赤ん坊の話ではなく、でもそれ同様に彼女が可愛がっていたぬいぐるみの話。

愛する恋人との微笑ましい会話や可笑しみのあるシーンもあるが、徐々にエスカレートする、どこまでも独りよがりな主人公の言い分は聞いていて気持ちの良いものではない。
頭に血がのぼりやすく、暴言を止められず手を上げてしまい、思い切り怒りをぶちまけたあとに必ず不安気になるところなんか、その性質をよく表している。

これが冷静に書かれた私小説であり、癖があるのにとても読みやすい文章で構成されていて味のあることが、二重に複雑な気持ちにさせる。
どうしようもない主人公のことをこんなに嫌だと思っているのに、この先この二人はどうなったのだろうと、ふと気になってしまう。

books.bunshun.jp/ud/book/num/9

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