『アサイラム・ピース』は、アンナ・カヴァン名義での初めての作品集とのこと。
以前『草地は緑に輝いて』という短編集と、長編の『氷』を読んだことがある。細部を書いているのに想像を掻き立てられることが多く、近づけそうなのに触れられない世界が広がっていて惹きつけられる。
カヴァンは重い鬱病を患っており、ヘロイン常用者でもあった。精神病院への入院経験などからこういった深淵を覗くような作品が生まれていったのだと想像するが、文章には作家の冷静なまなざしを常に感じる。どこかで迷い込み、戻る道が分からなくなってしまった人々のあわれ。安心と、おそらく愛情を必要としている登場人物たち。
とある入院保護施設の患者たちが登場する表題作が特に好みだった。閉ざされた土地で悲しみをたたえた患者の代わり映えしない長い一日を読んでいると、こんな永遠のような日々が何故だかとてつもなく愛おしく思えてくる。
表題作以外では、圧倒的な権力と対峙している無力な人という構図が印象的で、また別種の絶望感に支配されていた。見えない敵との終わりのない戦いが具体的にどういったものなのか、読者には知らされない。追い込まれていく主人公をひたすら眺めることしかできない。
@ShinKaonio
いいですかね〜?なんか、とことん傍観者の立場で見てる感じなんですよね
他の読者はもっと内面に入り込んで読んでるのかも……
@erin
『近づけそうなのに触れられない世界が広がっていて惹きつけられる。』というエリンの感性がいいね。