深町秋生『煉獄の獅子たち』はヘルドッグスシリーズの第二作目。極道組織のトップが入れ替わり、内部で揉め事が起こる頃を書いた前日譚にあたる。
私は一作目の主人公が好きだったし、早くその続きが読みたかったので物語に入り込めないかもしれないと思っていたけれど、杞憂だった。
ヤクザを憎むあまり危ういラインを行き来するマル暴と、組織ナンバー3の秘書をつとめているヤクザ。この二人の主人公の魅力が際立っていて、有無を言わさずあちらの世界に引き摺り込んでくれた。
ヤクザの世界も警察の世界も何も詳しくないし、登場人物の誰かに共感することもないのだけれど、なぜこんなにハマってしまったんだろう?
容赦ない暴力でねじ伏せる死に物狂いの戦いだから、命をかけて相手を出し抜き騙し合う。そこには闇を抱えて後に引けない苦しみもあり、それぞれのがんじがらめの事情が一つの出来事を立体的にしていて惹きつけられる。
前日譚なので結果は既に分かっているのにハラハラするし、主人公には死んでほしくなくて先を読むのが辛くなったり。知らず知らずのうちに情が移っていたようで、これが地獄であったとしても終わらないで生きていてほしいと願った。
三作目を読むのが楽しみ。