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津村記久子『まぬけなこよみ』は三年間の歳時記の連載をまとめたエッセイ本。
新年明けて初詣に行く話から、一年が経ち大晦日の年越しそばの話まで。
面白くて何度も吹き出した。基本的にゆるゆると肩の力を抜いていられるのに、時折ツボに入る表現があって不意打ちで笑わされる感じである。

お花見に命かけてる感じのする春の季節を読んでいて、まだ今は秋なのに「冬が終わったら桜の季節が来る!」と思わずワクワクしてしまった。私も桜が好きなので。(主に食の面で……)
藤もお好きなようで、サラサラと咲く藤をいつか見に行ってみたい気がした。好きなものを語る熱意って、読んでいても伝わってくるし楽しいですよね。

子どもの頃の思い出の話が多く書かれている点も私には興味深かった。
学校、友人、家族のこと、家庭環境の変化についても感情的にならずフラットに書いてあって、こういうのを思い出すのはつらくないのかしらと気になりつつ、私自身はほんのりと幸福な気分を抱きながら読んでいた。
あとがきで、そういった思い出を文章にする前と後のご自身の変化についても書かれていて納得した。大人になってから冷静に記憶を探っていくのは、自分のためになるのかもしれないと思った。

publications.asahi.com/ecs/det

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