コーマック・マッカーシー『ザ・ロード』(黒原敏行 訳)読了。
2007年ピュリッツァー賞受賞作。
終末世界を舞台にした作品には惹かれることが多く、没入して楽しんだ。
登場人物がごく少なく、変化も少ない話なのに最後までまったく飽きなかった。
この世界は何らかの天災や、すべてを滅ぼす戦争が起きた後なのか。
詳しいことは書かれていないが、何かをきっかけに植物も動物も死に絶え、もちろん人も生きるのが困難になって久しい、どこかの国が舞台。
高いサバイバルスキルを持った父親と幼い息子が、寒い土地を出て、ひたすらに南へと向かう旅路を書いている。
読点がほとんどないために、二人の行動や思考が頭にどんどん流れ込んでくる面白い文章だった。
会話も鉤括弧がない。それが彼らのリアルな会話に思えて私は好きだった。
荒れ果てた土地にはもう食べ物がなく、生き残った人間たちは争い、奪い合うしかない。この父子にとっては過酷な現実ばかりで、終始可哀想で仕方なかった。お互いを信頼し合っているのが唯一の救いで、揺るがない親子関係は読んでいて安心した部分でもある。
どこまでも優しく清らかな少年は聖人のようで、善と希望を未来に持って行く存在だと思った。
@erin エリンさんのおっしゃるとおり、『どこまでも優しく清らかな少年は聖人のようで、善と希望を未来に持って行く存在だと思った。』ですね。
善き者たちよ永遠であれ。
Re
@ShinKaonio
ですよねぇ〜 こんな良い子で優しかったらすぐ死んじゃうよ〜!と思ったのに、そんな子どもこそ生き残ったのがやっぱり人類の希望だなと🙏
緊迫感でグッと集中した箇所抜粋。
二人は母屋の中を全力で駆け抜け玄関を出て階段を降りた。車道を半分くだったところで少年を野原へ引っぱり出す。うしろを振り返った。イボタノキの垣根の残骸が部分的な目隠しになっているが猶予時間はせいぜい数分いや一分ないかもしれない。斜面の下で死んだ笹の繁みを突き破り道路に出るとそれを横切り反対側の森へ駆けこんだ。彼は少年の手首を握る力を倍にした。走るんだ、とささやいた。逃げなくちゃいけない。家のほうを振り返ったがなにも見えなかった。あの連中が車道を降りてきたら森の中を走っているこちらの姿を眼にとめるだろう。今が正念場だ。正念場だ。彼は地面に身体を落としながら少年も引きおろした。しーっ、といった。しーっ。
ぼくたち殺されるの? パパ?
しーっ。