皆川博子 著『夜のリフレーン』読了。24の短編小説集。幻想と耽美。影の中に美しい文章がゆらりと匂い立ち惑わせてくる。知らない間に非日常に迷い込んで1人きりになってしまったような。このまま現実と幻のあわいで漂っていたくなる。一つ一つのお話は短いながらも密度の高さがあった。
特に印象に強いのは以下の3編。・衆道をテーマに心の奥に触れる「妖瞳」・纏足の少女をめぐる大人たちの醜さが露わになる「紅い鞋」・虚無感を隠さない、謎多き女が主人公の「青い扉」どれも、こういう話なんですよと一言で表せない、表したくないようなものばかりで迷いながら感想を書いている。図星でドキッとさせられる一文が挟まってきたり、淡々とした語りに共感したり、特に女性が主人公の話は他人事に思えなかったりもする。この主人公は何故こんな風に生きているのか、何が彼ら彼女らをこうさせたのかと物語に引き込まれていった。
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「妖瞳」の主人公の肥大した想像力の描写にハッと吸い寄せられた。光次郎の言い淀んだことを内心では知りたがっている。その1ページほどの文章がまさに主人公の言う通りに「舌なめずり」する様子だった。激しい思い込みが頭の中で暴走しているのがよく伝わってくる。共感できる箇所はないけれど、流れるように読める心地よさや、欲望に満ちた表情まで浮かんでくるような迫力があって、ここを何度も読み返してしまった。口に出していないのに異様な空気を感じ取り、光次郎が後じさりしたのも無理はない。
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