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ルーシー・ウッド著 木下淳子訳『潜水鐘に乗って』(東京創元社)、堪能しました。すごくよかったです。巨人や精霊といったコーンウォールの伝説を下敷きにした12の物語――なのですが、端正な文でさりげなく描かれる細部の数々によって、家や海辺の景色、登場人物たちの実在感がすごくて、異様なことが起きていても現実として受け入れてしまう不思議な読み味。まだ周囲に空気感が残ってます。

潜水鐘が好きなので(『前日島』とか。あれはまさに鐘でしたが)、潜水鐘で若い頃に亡くなった夫に会いに海底に向かう表題作から掴まれました。身体がしだいに石になっていくのを感じながら、いろいろな用事をこなしつつ最後の一日を過ごす「石の乙女たち」、巨人の肉体感覚に囚われだした少年が仲良しの少女と巨人の墓場で遊ぶひとときを描く「巨人の墓場」、別の時間を生きる精霊たちが家に住む人々の移り変わりを見守る「精霊たちの家」、浜辺に流れ着くガラクタの手触りや、祖母と孫のやりとりがいい「浜辺にて」、老人ホームでミセス・ティボリが持ち込んだ数々の瓶が見せる幻影「ミセス・ティボリ」等々、どれも印象的でした。最後の「語り部(ドロール・テラー)の物語」は、小説を書いている者として、胸にくるものが…。

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