レアード・ハント 柴田元幸訳『インディアナ、インディアナ』が来月復刊されるそうで、めでたい。断片的な回想、送られてくる手紙、送る手紙、奇妙な話などがうとうとしながら目に浮かぶ情景のように染み入ってきて、しだいに背景が立ち上がってくるという、もう大好きな本なんですよ。十数年前に柴田元幸さんの朗読会でペーパーフラワーを水に浮かべるあたりの朗読を聞いて痺れ、即買ったのだった。
〝それからノアは、自分がまたいつの間にか居眠りしていたことに気づき、今回は人々が壁のなかに立っていて透明なのは壁でなく人々であることを悟る。彼らがゆらめき、やがてじわじわ消えて行くのをノアは見守り、ついには彼らは完璧に透明になる。〟
〝長い、長いおはなしを書いてそのあいだわたしたちは腰がだんだん太くなって頭ガイコツがどんどん細くなって、そのうちに誰かが誰かを送ってよこしてわたしたちの絵を土でかいて、それからみんな古くなった自分の顔をはずして、どこかにかくして、それから立ち上がってこがね色のひろいひろい野原をいつまでもかけていきました。〟
復刊は twililight / ignition gallery からだそうです。