(続き)この本が教える最も重要なことは、ホモサピエンスがネアンデルタール人やデニソワ人と交ざり合って成立してきたこと、ホモサピエンス自体も一本道に歴史を歩んだのではなく、離合集散と消滅、上書きなどを繰り返していることを、DNAから明らかにしたことです。一昨年だかに宇宙生物学の本を読んだが、その時と同じ、分子生物学の知見は、長い生物学の歴史の答え合わせをやっているかのように受け止められる。これほど知的好奇心を揺さぶられる話はないな、って思います。
さて、本書では言語についても若干触れている。DNAから答え合わせできるある集団が、言語によって社会集団となり得ていたことは想像に難くない。言語は本質的にはDNA的根拠を越えて広がりうる、上書きしうるものではあるけれど、実際にはあるDNA集団と強固に結びついていたことは、改めて認識させられる。
話題として出てくる1つは、DNA的には4-5000年前と考えられるヨーロッパ集団の成立です。これまではカスピ海南部のヒッタイトなどアナトリアをヨーロッパ諸語のふるさとと考えてきたようだが、これが北部のステップ地帯、あるいはウクライナにかかるあたりにいたヤムナヤ集団とやらに措定されるべきという。(2/3)