歴史学が基本、論であるというのは改めて考えるとかっこいい。昨年、今更ながらカー『歴史とは何か』(新版)を読んだが、当然のことながらマテリアルたる史料を並べたところで歴史は浮かび上がってこないのであって、論こそが学問の中心だ。
僕の本も、「〜の研究」というこの方面によくあるタイトルで行くかなとぼんやり考えていたところに、編集の方から「〜形成史論」はどうですかと言われて、即採用した。山のようなデータの量を見せて、ほら事実こうでしょうという研究のダイナミズムにも憧れに似た感覚はあるが、論を先に立てて証拠を集めてくるやり方が自分のスタイルであることは、言われて改めて気づいたのだった。
本を出してからコーパスや人文情報学への関心が強くなって、いまはデータに物を言わせるような研究の方を向いている。でもどこまでいっても、研究は本質的に論なのだし。「〜の研究」というタイトルもキャリアが終わるまでに書きたいが、中身としては論のほうを頑張りたいという思いは変わらないな。