小野寺拓也、田野大輔
「検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?」読了。
【良いこと】は時代の潮流に乗ったりワイマール共和国の政策が実を結びつつあったのを自らの手柄と吹聴しオリジナルなものは何もなく全ては戦争の為だけになされたもの。人々は夢を見せられただけで【良いこと】は戦争のため打ち切られたり逆に悪化したものもあり効果はすべて吹き飛んだと。優れた種からなる民族共同体の一員のみ適用され、弾かれた【劣等】のレッテル貼られた者を敵とみなし、搾取略奪排除、死こそ免れても断種、帰結は戦争とホロコーストという破滅につながったことを一つ一つ反証挙げ実態を検証する本。
とはいえ、でっちあげでユダヤ人密告し利益得る人いたり、排除監視され敵とみなされた人々と付き合うことは社会的にリスクあり、悪意なくとも空気同調圧力で避けたりと市民も共犯者だと…。そして迷惑かけまいと配慮し彼らも付き合い控えるようになったとか…。昨今の物事いろいろ重ね合わせてしまい気が重くなる…。
あとあまりにも源泉徴収はナチが始めたという誤解が多いので二刷目以降は注釈に追加されています。一般の人にもわかりやすく書かれ、日本を代表する現役のナチ研究者お二方が書いているので信頼できる本です。いまの時代ぜひ読んでほしい。
追記②
この本はナチが【良いこと】もしたのかを反証をしていますが、世の中にはナチがした最大の【悪いこと】ホロコーストもなかったことにする歴史改竄したい人たちがいて、それに対して反証しているティル・バスティアン「アウシュヴィッツと(アウシュヴィッツの嘘) 」もオススメします。白水Uブックスのレーベルなので新書並みのページ数ですが、中身はみっちり密度濃いです。
原書は94年出版(邦訳は95年)ですが、いまだ古びずにアクチュアルであり続け、いまの時代さらに重要性が増しています。興味ある方はぜひどうぞ。
もう少し幅広い範囲の欧州での歴史改竄の状況について知りたい方は、武井彩佳「歴史修正主義 ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで」もオススメです。
追記①
11月ポグロム(クリスタルナハト)もだけど、【国家社会主義】でなく、なかなか用語が定着しない、なぜ【国民(もしくは民族)社会主義】という訳語にすべきかも、ヒトラーにとってはナショナリスト=国民主義者=社会主義者であったこと、民族共同体に奉仕する者見合った者だけ同胞とみなし他は敵として排除するからだということを詳しく説明されています。
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