西池袋の「ブックギャラリーポポタム」に連れて行かれ、店内をいろいろと見た。
そこで写真1枚目の『名古屋渋ビル手帖 第2号』(名古屋渋ビル研究会発行・編集)を買ってみる。
何冊か試しにパラパラ内容を流し見て、一番自分の好みそうな号に決めたけれどどれも素敵。
私も「渋いビル」の愛好者なので、どこかで発見すると外観の写真を撮ったり、また一般人でも立ち入れるような店舗などの施設なら、中を見物してみたりもする。
でもこんな風に冊子の形でまとめたことはないし、きちんと現所有者の方に連絡を取って非公開部分まで調査するとか、過去の様子が写された写真も参照して記録するのなどは全然実行したことがないので……『渋ビル手帖』はまさに「研究会」の名にふさわしく心がわくわくする1冊だった。
なんというか面白い立ち位置の存在だな、と思う。渋ビル(昭和初~中期に建造されたものが持つ独特の様式・細部の意匠)。
広義の歴史的建造物ではあると思うけれど、社会的な文化財というよりも個の所有物的な側面が大きい。
最近私が見つけたのは大田区の髙橋ビルかな。写真2&3枚目。
扉の取手の「PUSH」にご注目。Pのアルファベットの中に「押」の漢字1文字が内包されているのはすごく渋いし、結構レアだと感激した。
良。
あとは今年の1月半ばに名古屋で発見したこのあたり……もう相当に強烈な魅力を放っていた小さなビル1階の扉。
確か新栄町駅~千種駅の中間あたりだったかな。
そう、これ、何らかの会社? 事務所? が入ったビルの出入口のもので、観音開きになる仕様だったんです。実際に開けて覗いていないから正確なところは分からないけれど、おそらくは細い上り階段に続いている。
しかも他の部分はタイルだったりモルタルかコンクリートっぽいごく普通の壁だったりするのに、ここだけに木の素材を使っていて、良すぎた。畳みかけるように視界に飛び込むのは味のある磨りガラス。
引、の1文字。
正方形の金属のパーツ。
この世界のどこかに、これを製造した場所がかつて確かにあったのだと想像するだけで、ときめいてしまった。自分に強大な力さえあればもぎ取って持って帰りたいくらいだから。
一般公開されているわけではないので中に入れてくれと頼むこともできないのがやはり市井の建築散歩の難しさというか、本当により深いところまで調べたいなら、それこそ研究会として活動しなければならないのがこの手の建物なのであった。
こっそり扉のところだけこうして記録。
左側に写っているあやしい影は私と同じく散策趣味の友人です。
妖怪じゃないよ~。