「裏切りの小説」 世界的名作・カミュ「異邦人」で味わう不条理 - 毎日新聞ニュース
https://mainichi.jp/articles/20231019/k00/00m/040/171000c
BT
私はこのインタビューの先生については何も存じ上げないのですが、ちょっと疑問に思ったので。
通り魔殺人を起こした犯人が、
「誰でもいいから殺したかった」などと言うことがあります。最近はそういう言い方に対して、「本当に誰でもよかったのか、弱そうな相手を狙った犯行だったのではないか」と批判されることが多くなりました。
アルベール・カミュは、フランスが北アフリカで植民地にしていたアルジェリアで、植民者側のフランス人として生まれた人です。
そして、カミュが書いた『異邦人』って、「植民者が現地のアラブ人を殺す」小説なんですよね。
『異邦人』についても、本当に単なる「不条理」殺人といっていいのか、今現在の視点から見ると、問題になると思います。
(サイードも指摘していますし)。
現在のこのパレスチナの文脈のなかで、「アラブ人が無意味に殺される」話について語る際に、「殺した」側のムルソーの話ばかりを語り、「殺される側」からあらためて捉えかえす視点がないのは、おそらく無意識にフランス人・植民者側の視点に立っているからだと思います。
おそらく定年も間近な教授が、数十年の研究の果てに、未だにこうした地点からしか語りえないのだとしたら、「文学研究」の価値ってなんだろう、と思ってしまいます。 [参照]