Netflixドキュメンタリー『メンデス兄弟』 ※性虐待に関する内容あり
殺したこと自体は兄弟が認めており、死刑もあり得る第一級殺人か、故殺罪かという量刑が陪審員評議の争点となった。ここでは性別によって判断がきっぱり分れたという。
男性は全員が単純な第一級殺人と判断し、女性のほとんどは兄弟に同情的だった。陪審員を務めた女性の一人は「男性たちは、父が息子を性的に虐待するという事実が理解できなかったようだ」と話す。結果、一カ月に及ぶ評議でも結論は出ず、裁判はやり直しとなる。
ここでまた信じられないのは、有罪にできなかった"汚名"を濯ぐために、二度目の裁判では過去の性被害に関して論じることを判事が禁じたことだ。陪審員は量刑ではなく、第一級殺人での有罪か、無罪か、の二択を迫られることになる。
裁判の結末はググれば出てくるので書かないが、作品内でも述べられる通り、男性への性被害やサバイバー特有の思考/行動パタンが多少なりとも理解されてきた今であれば、まったく違う結末になったことは間違いないと思う。裁く側の無知によって新たな悲劇が起きてしまう事実にズシンと重い気持ちになる一作だ。
同じくメンデス兄弟を題材にしたドラマ『モンスター:メンデス兄弟』もNetflixで配信されていますが、こちらはあまり評価が高くなく、当事者からは批判が相次いだようです。私は未見。たぶん今後も見ない。