日記
今日も昨日発見した捨ておいてあるミニスケボーを練習しに行こう。周りは道の改修のため通行止めの多い場所で人通りも少ないのでもってこいだ。日中にやるのは恥ずかしいため日が暮れてからだ。
平坦な場所で幾分か練習すると少しは乗れているような気分になってくる。今度はスピードを出した状態で試してみたいと坂道になっている道で練習したい。坂道の途中に猫が二匹、階段の上でくつろいでいた。人に慣れているようで多少近づいたところで逃げられたりはしなかった。
よし乗ろうと意気込んですぐ、スピードについていけず尻から落ちる。ミニスケボーは水のない用水路に落ち、鉄製の網のあるトンネルに吸い込まれていった。残念なことにトンネルの反対側から出てくるようなラッキーなことは起こらなかった。
スマホのライトを頼りにどこにあるか探し、通行止めのカラーコーンを繋ぐ棒を拝借して引き出そうとしてみたものの、長さは圧倒的に足らない。猫の「あいつは何をやっているんだ」という不審者へ向けるような眼差しを受ける。
網の鉄板はあまりに重かったが少し浮かせることができることができ、悪戦苦闘する。すると、塾帰りらしき女子高校生がその道を通ろうとしている。私はあまりに自分の不審者らしき姿を恥じて彼女を意識の外に追いやろうとするが、彼女は恐る恐る私に「大丈夫ですか、手伝いますか?」と声をかけてくる。なんて親切なんだ。結婚してくれ。じゃない、夜中にこんな不審者みたいな奴に声をかけたらだめだよ。私は「いえ、大丈夫です。大丈夫なので放っておいてください。ありがとうございます」と咄嗟に答える。そうですか、と彼女は道の先で曲がって消える。
私はなぜ「放っておいて」という身勝手な言葉を使ったのだろう。あまりにも馬鹿げた状態に自棄になっていたのだ。彼女にこの馬鹿げたことに付き合ってもらうのは申し訳なさすぎるのだ。だがその言葉は彼女の親切心を全くもって無視するものではないか。自分の根底にある相手への配慮のなさを後悔した。