『怪獣保護協会』のジェンダーアイデンティティの翻訳2
-ちなみに著者スコルジーは、ノンバイナリーが必ずしもトランスジェンダーと自己認識していない件に注意を払っているはずです。なぜなら本書にかかわるブログ記事で“trans and/or non-binary characters”と書いているので。
※“and/or”でつなげています。
https://whatever.scalzi.com/2022/04/19/a-month-of-the-kaiju-preservation-society/
-細かいことを言うと、怪獣の生態を論議している際のセリフ「あるいは、あなたが子宮を持つ性別の人だとしたら、どうやって新たな人間を?」は「子宮がある人がどうやって新たに人間を育むと思っているの?」という意味で、ニーアム個人に向けた仮定ではない気がします。
-スコルジーは過去にブログで「people with uteruses」という言葉を使っていました。女性と「女性ではないが妊娠能力がある人」をまとめて指したい場合に使う言葉です。
翻訳者後書きとニーアムの呼びかけ言葉mateについては、読者に誤解を与える可能性があるので投書しようと思います。残りは好みや解釈の部分もあるので。
余談
「そんな細かいことにこだわるの?」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、せっかく日本ではまだ貴重なジェンダークィア(かもしれない)キャラクタが登場する本なので、その表象や正確性はがんばってほしいところです。
本書の場合は著者の配慮や意図があり、そもそもコロナ禍中が舞台で非常時にどういう人たちが困窮しがちだったかを複数の観点から書いているのです。例示すると;
主人公ジェイミーは友人の男性同士カップル(うち1人はトランス男性)と同居しています。劇場に勤める二人はコロナ禍で収入を失い、貯金も少ないため、しかたなく理解のない家族を頼ろうとしています。ジェイミーは友人たちとの生活を守り、奨学金を返済するために働き口を必要とします。
なお、男性同士のカップルはもう一組、チョイ役で一瞬登場します。
ジェイミーやニーアムと共に活躍する同期入社の仲間たちは、推定インド系女性や推定マオリ系ニュージーランド人男性です。ジェイミー以外は理系で博士号もち。みな、収入のために妙な仕事に飛びつかざるを得なかったわけですね。