感想:アセクシャルなオタクカップルが、大組織に一矢報いる爽快なエンディング。インターネットの善なる部分にフォーカスされた作品でもある。コリイ・ドクトロウを連想する味わいです。
魔法の特許出願まわりはもう少し練られているほうが好みです。最後のほうのノアのセリフが正しければ、自明性で引っ掛かってそもそも特許登録までこぎつけられないような。
著者ウィズウェル自身がアロマンティック・アセクシャルで、慢性疼痛や聴覚障害を抱え、今まで見かけなかったような主人公たちを描く作家です。
私のお気に入り作家でもあるのですが、今回はスッキリしたストレートな筋書きすぎて乗り切れませんでした。ジェンダーやセクシュアリティのクィアネス部分は好きだし、元気が出ましたけれど。
ジョン・ウィズウェル「百手のキムを鎮めるに際してのガイドライン」は、週末翻訳クラブ バベルうおさんの同人誌『BABELZINE』 Vol.3に掲載されています。日本語で読めるのは現状これだけかな。
https://babeluo.booth.pm/items/3379127
最初のツイートに訂正です。
誤:治療のために2人の特許出願を
正:治療のために金を必要とする2人の特許出願を
本作に乗り切れなかったの、インターネットでたむろするオタクの善性を私が信じられないせいもありそうです。
実現したい魔術領域について、アホの荒らしを装ってインターネットで「◯◯なんて絶対無理だろw」と煽り、反論から技術を絞りこんでいくシーンがあるのですが、いまいち素直に笑えませんでした。