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“D.I.Y.” by John Wiswell
ヒューゴー賞ショートストーリー部門候補。
tor.com/2022/08/24/d-i-y-john-

舞台:資本主義やエリート主義、気候変動による深刻な水不足に苦しめられる街。青春小説×科学のように魔法が機能する世界観。
登場人物:インターネットで独自に魔法研究にはげむキッズのノア(he/him)とマニー(ze/zir)。ノアはケルブ肺と呼ばれる持病を持ち、時おり激しい咳の発作に襲われる。マニーは腎臓の機能に問題があって車椅子を利用している。

あらすじ:
ノアとマニーは、ノアがマニーの弱小Youtubeチャンネルのコメント欄で活発に投稿していたことからリアルで会うようになり、かけがえのない関係になる。2人は大気から水を集める魔術を開発し、特許出願を試みる。
しかし英雄的魔術師ヴェイモン率いるオジマンディアス学園が、市から最安値で干ばつ対策を受注し、治療のために2人の特許出願を否応なしにかっさらっていく。オジマンディアス学園は裕福な一部の市民にのみ優先的にわずかな水を供給した。
だがその後、インターネット上に登録された特許やノウハウの全容がリークされ、水の生成技術は万人のものとなる……。

感想:アセクシャルなオタクカップルが、大組織に一矢報いる爽快なエンディング。インターネットの善なる部分にフォーカスされた作品でもある。コリイ・ドクトロウを連想する味わいです。
魔法の特許出願まわりはもう少し練られているほうが好みです。最後のほうのノアのセリフが正しければ、自明性で引っ掛かってそもそも特許登録までこぎつけられないような。

著者ウィズウェル自身がアロマンティック・アセクシャルで、慢性疼痛や聴覚障害を抱え、今まで見かけなかったような主人公たちを描く作家です。
私のお気に入り作家でもあるのですが、今回はスッキリしたストレートな筋書きすぎて乗り切れませんでした。ジェンダーやセクシュアリティのクィアネス部分は好きだし、元気が出ましたけれど。

最初のツイートに訂正です。
誤:治療のために2人の特許出願を
正:治療のために金を必要とする2人の特許出願を

本作に乗り切れなかったの、インターネットでたむろするオタクの善性を私が信じられないせいもありそうです。
実現したい魔術領域について、アホの荒らしを装ってインターネットで「◯◯なんて絶対無理だろw」と煽り、反論から技術を絞りこんでいくシーンがあるのですが、いまいち素直に笑えませんでした。

ジョン・ウィズウェル「百手のキムを鎮めるに際してのガイドライン」は、週末翻訳クラブ バベルうおさんの同人誌『BABELZINE』 Vol.3に掲載されています。日本語で読めるのは現状これだけかな。
babeluo.booth.pm/items/3379127

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