星来『ガチ恋粘着獣 ~ネット配信者の彼女になりたくて~』(バンブーコミックス タタン)は正直、題名や表紙に露悪的などぎつさがあり、私は最初のほうで読むのを中断していたのですが、ふと一気読みして遅まきながら魅力を理解しました。
現代日本を舞台に、人気動画配信者グループとファンの関係を用いて「人間には魔が差す瞬間があり、どんな人でも他人への執着で逸脱する」という物語をやっています。『ガチ恋~』は今のところ本格的なBAD ENDは起こらず、各部で少しひねった、良いことも悪いこともある決着を迎えています。
人間描写がうまく、心理サスペンス/クライムフィクション色があります。ちょっとマーガレット・ミラーを思い出しました。
ミラーがどんな作家かというのは、柿沼瑛子さんによる「初心者のためのマーガレット・ミラー入門」(2011)を読むときっとわかりやすいです。
https://honyakumystery.hatenadiary.org/entry/20110920/1316475126
ガチ恋の感想続き(やや内容に踏みこんでいます)
配信者グループメンバーである男性3人のそれぞれの物語にパートが分かれていて、スバル編→コスモ編→ギンガ編と3人目まで話が進んでいます。
ギンガ編で初めて、男性ファンかつ人気動画配信者であるミツクリという人物が登場するのですが、恋愛か憧れか、はたまた他の感情なのかが切り分けられず、当人も混乱するという展開になっています。
それを同じ配信者グループのメンバーたちが茶化さず、ただほんのり心配して相談にのっているところも安心しますね。
9巻より 台詞の引用
「恋愛感情こそ至上って言い方
気に入らないな
俺にとっては下の下だね
誰もが持てる感情だし
俺の努力や愛は
そんなありふれた枠に
収まらないんだよ
…なのに…
そうかも…って
思ったら連絡すら
出来なくなって…」
あとvineやustreamといったかつて存在した配信サービスを名前をもじりつつ作中で使うのが、30代くらいの読者のノスタルジーを喚起しています。