ゆるやかな丘のてっぺんに学校がある。しかし建ものは1階か2階しかない。のこりは地下にあるらしい。天気はくもっている。そのわりにあかるい午後のことだ。
学校の手まえにはあさくて広い谷がひろがる。道路がその空間をとりまいて両がわの尾根へのびる。
生徒がばらばら外に出ていた。ぼくもそのなかのひとりだ。なにもせず谷から吹くかぜにあたる。ほかの子はガードレールをこえて谷の草はらへおりてぶらぶらしていた。それにそそられてぼくもおりてすこし歩いてみた。なんてことないままほかの子たちのあいだをぬけておりていくと、谷はすり鉢形で、反対はまたおなじようになだらかにのぼっていた。
らくにあがれそうに見えたのでそのまま上がっていった。さいごにやっぱり道路わきのガードレールが現われた。しかしこっちはすこしたかさがあってのり越えるのは大変そうだな。
とつぜん学校のほうからサイレンがながながと谷間にひびいてきた。そのあとアナウンスで生徒はみな校内へもどってくるようにしらせてくるのを聞くなり、外に出ていた生徒たちはいっせいに学校からはなれていく方向へてんでばらばらに走って逃げはじめる。ぼくもそのけしきに押されてガードレールをこえて上の道路に上がった。先をみると向かいには駐車場と、なにかお店らしい建てものがひとつある。
その2階だての店と駐車場のうしろには車通りのある街道がよこたわる。いきおいで走ってよこぎるのはあぶない。それで右ての駐車場のすみからも上がれる歩道橋へまわった。街道の向こうから学校に通う生徒のためのものだ。
橋のうえに出て見下ろすと車はまるっきり通っていない。むこうには街道から斜めに水路がのびて農地のなかへ入っていく。それにそって歩道が1ぽんみちにつづいている。ぼくはそこへ下りていく階段をえらんだ。水路と歩道をへだてた植こみに花がさいていた。したに下りてみると、歩道橋にあがるときにはほかにもいた生徒がいなくなって、いまはぼくひとりだと気づいた。たぶんほかの階段を下りていったんだな。ここは街道よりもいちだん低い。
その歩道を走って農地を突っきると、土地はさらに低くなり海へ出た。学校からこのくらいだとすぐ追いつかれちゃうな、、どうしょ。と海をのぞくと白くあわを立てて波だっているもののそこまでは荒れてないようだ。思い切って北へわたることにする。
もっとながくかかると見込んでいたのに北がわの陸はもう見えてきた。これじゃこっちにまで連れもどしにきそうだ。でも水にぬれないようにとんですこし疲れたから休も。学校のひとは来たらそのときに考えりゃいいや。それで上陸したばしょのひだりにあったデパートふうの建ものにむかった。