風間から「今秋田の……いや、岩手かな? 山の中にいるんだけれど、坂上君、車を出してくれたまえ」と電話が来て心からの「はあ!?」が出る坂上君(千葉)

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「具体的にどこなんですか?」
「分かったら苦労しないよ」
「そのせいでこっちが苦労しそうなんですよ」
「君の苦労なんか知ったこっちゃないよ」
「今何時だと思ってるんですか」
「何時なんだい?」
「午前三時ですよ」
「ふうん。二時くらいかと思っていたけれど。関東と東北にはそんなに時差があるんだね」
「何でそんなところにいるんですか?」
「いやあ、ヒッチハイクでここまで来たんだけれど、急に運転手が車を置いて逃げていってね。僕は山の中で置き去りって訳さ」
「逃げ……何かしたんですか?」
「何もしやしないよ。強いて言うなら、そうだな、僕のとっておきの怪談を披露していたよ」
「話が苦痛で逃げたんじゃないですか?」
「車を置いてかい?」
「それもそうですね。今は車の中なんですか?」
「そうとも言えるし、そうでないとも言える」
「どっちなんですか」
「窓が割れていてね」
「はい?」
「正確にはさっき割れた」
「割ったんですか?」

「君は真正の馬鹿なのかい? そんな訳がないじゃないか。誰がこんな東北の山中で車の窓なんか割るっていうんだ。割れたんだよ、突然ね。誰かが外からバンバン叩いていたから、多分そのせいだろう」
「強盗ですか?」
「こんな東北の山中にかい?」
「今無事なんですか?」
「殺す」
「はい?」
「殺してやる」
「風間さん?」
「何だい?」
「今僕に向かって殺害予告しました?」
「しないよ。されたいのかい?」
「されたくはないですね」
「殺す」
「そこに誰かいるんですか?」
「いないよ。いや……ああ、うーん? いるのかな?」
「どういう事です?」
「さっきから女性の幻影がちらちら見えている気がするんだよ。多分気のせいだろうね」
「多分気のせいじゃないので逃げた方がいいですよ」

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