顕現したてぽやっぽやのシールムネ、とりあえず見学ねと連れて行かれた演練場で迷子になったところを助けてくれた清光くんに一目ぼれしたけどよその本丸の子だしもう会えないかな…と思ってたらその後も出かけるとすごい偶然で何度も出くわすように

うちの本丸の清光くんもすごくかっこいいんだけどいつもそっけないし忙しそうだし、よそ本丸の清光くんはうちの本丸のと全然違う…だいすき…会うたびに好きになっちゃってもうこの胸のときめきは誰にも止められない!でもあの子のこと何も知らない!ってモダモダしてるとなんと本丸のあんまり優しくない清光に「あんたが好き」と告白されてしまう

もちろんビビッてお断りして、そうだ僕も勇気を出さなきゃ!ってあのよそ本丸の清光くんに告白する決心をした則宗だったが…

ところがその日以降、ばったりとあの優しい清光には会わなくなった
もちろん以前も約束をしていたわけではないが、あまりにも会えなさ過ぎて則宗はふるえた
会いたくて会いたくて痙攣そうだった

会えなくなってしばらく経ったある日、則宗は審神者のおつかいで政府に出かけてそこであの清光を見つけた
いた!間違えるもんか!だってあれが僕の好きな坊主だもん!
可憐な恋心を抱えていても堂々たるむっちりマッチョな則宗は突撃の勢いで清光くんをつかまえた
「坊主」
その瞬間気づいてしまった

口をついて出ようとした言葉は全部、本丸にいるあのあんまり優しくない清光くんのことだった

聞いてくれ、あのあんまり優しくない坊主に好きだと言われたんだ
あの坊主はほんとにあんまり優しくないんだ、だって僕と絡んでくれないしおやつのプリンのおかわりだって全部はくれなくて半分こしようって言ってくる

あんなに可愛いのに僕にはあんまり笑いかけてくれないし、非番の日に一緒に出掛けようとも言ってくれない
きっとあの坊主は僕の半分も僕を好きじゃない。
そのくせ僕のことを好きだと言うんだ

「どーしたの」
と優しい方の清光くんが言う
則宗はしおっとうなだれて「僕はだめ刀だ…」とつぶやいた
最近廻を観たのだ

「悲しいことでもあった?」
と清光くんに聞かれ、則宗はこういうときあんまり優しくないうちの本丸の清光くんならこういうときなんて言うんだろうと考えた
たぶん「そっか」とそつけなく言うだけのような気がする
それから「おやつ食べる?」なんてデリカシーのないことを言う
でも則は気づいてしまった
則宗はそういう、そっけなくてちょっと不器用な清光くんが好きなのだ、優しいよその清光くんじゃない、あんまり優しくない方の清光くんがいいのだ

則宗は黙ってかぶりを振り、「ちょっと用を思い出した」と告げて清光くんとわかれ本丸に帰った

則宗は本丸に帰るとその足でまっすぐあんまり優しくない清光くんのもとへ向かった
清光くんは自室でお茶を飲みながら雑誌をめくっていて、則宗を見ると普通の顔で「どーしたの」と聞いた。
ほんとに普通だ、本当にこの坊主は僕のことをそんなに好きじゃないんだろうな、あんな告白して僕に断られたのになんで平気な顔をしてるんだ!?
なんてことを考えて則宗はぐっと眉間に力を入れてから清光の向かいに座った
「坊主」
「うん」
清光くんはそこでふと手を止めて「あんたもお茶飲む?」と聞いた
こういうところだ、こういうところがデリカシーがないって言うんだ、どう考えても僕は真剣な話をしに来てる顔だろ!
「いただこう」
しかしお茶に罪はない
清光くんは急須を引き寄せポットから湯を注ぎ、実に雑な感じて入れたお茶を湯呑に注いでくれた
こういうとこなんだよな~と思う
きっとあの優しい清光くんならなんかいい匂いの紅茶とかを入れて焼き菓子なんかもそっと出してくれるんだろうな、何しろ優しいしきっとおしゃれだから
いやもちろんうちの清光くんだっておしゃれでは負けてないんだけど

出されたお茶はびっくりするくらい美味しかった、あんなに適当に入れてたのに、しかもどう見ても二煎目より後だったのに豊かな香りとほんのわずかな香ばしさが口の中に広がった
「美味いな」
「だろ」
則宗は、こういうとこだなと思った
こういう雑なところ、さりげなくて本当にどうでもよさそうな顔なのに優しさや気遣いがそこから見えるところに、則宗はすっかりやられちゃったのだ

「なあ坊主」
「なーに」
ふられた相手にここまで構えずいられるものだろうか
「僕は坊主が好きだ」
「うん、そーね」
「その……先だってお前さんが僕に言った話を、今から受けてもいいだろうか」
清光くんはちょっと首を傾げた
「こないだ言った話って?」
こーゆーとこだ!!!
と憤慨しつつも則宗はごくんと唾を飲み下してから言った
「ぼ、僕を好きで、ここっ、こっ恋仲になりたいって言っただろう!」
恥ずかしくて頭がパーンしそうだった
清光くんはびっくりして目をぱちくりさせている
そんなにびっくりしないでほしい

フォロー

清光くんはしかし、即座に答えた
「わかった。じゃ、俺とあんたはこれで恋仲ね」
「えっ」
そんなあっさり?
「あんたが言ったんだよ」
「えっ?」
そうだっけ?
考える隙は与えられなかった
清光くんはすっくと立ち上がると隣の部屋の障子を開けて「安定、俺じじぃと付き合うことになったから」と高らかに宣言した
通りがかっただけだったっぽい山鳥毛にも「俺あんたのとこのご隠居と付き合うことになったからよろしく」と報告している

則宗は清光くんの部屋にひとり取り残されたままなりゆきを呆然と見守るしかなかった

こうして則宗はあんまり優しくない方の清光くんとお付き合いをすることになった
すごい勢いでその事実は本丸中に知れ渡った

後日、則宗は再開したあの優しいよその本丸の清光くんにそのことを報告した
「すごい勢いで話が進んじまった……」
と呆けたように言う則宗に、優しいよその清光くんは明るく笑った
「あはは、その俺必死だね。よっぽどだよそれって」
「そ、そうなのかい」
「そーよ。でもすっごい惚れられてるのは確実だから、せいぜい振り回してやりなよ」
「ふりまわし……」

振り回されてるのはこっちのような気がするんだけど、と則宗は思ったが黙って頷いた

則宗は清光くんが実は優しいことは理解してたけど、清光くんがすごく頭がよくてそしてその頭の良さを発揮することに一ミリの躊躇も覚えない男士だということは理解してなかった

フルパワー全力の清光くんの怖さ、強さ、それから惚れたときの一途さを、則宗はこれから何度も何度も思い知ることになる

愛は力なのだ

おしまい!

ツリー形式で書くこの気楽さやっぱりいいな〜

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