昨夜の勉強会の件だけど、クライン派がブランク・スクリーンって言ってるって、一体どこからきたデマなんだろう?

多分(比較的フロイトに忠実だった)クラインでさえそんなこと言ってなかったと思うけど。

どちらかと言えばクライン派って良くも悪しくも「患者と“がっぷり四つに組ん“で格闘しているイメージ」しか私には無いな…それ以外のどの学派よりも。

大体、私の性格を見たら「泰然とブランク・スクリーンになっていられる」かどうか、分かりそうなもんなのに。笑

あと「患者の悲惨な話につい庇護者になりたくなってしまったり(何かしてあげたくなったり)逃げ出したくなりそうになる」っていうのはまぁ分かるとして特に後者は前者の結果なんじゃないのかな。

それって結局「何かしてあげられる」という驕り(万能感)が元々治療者の側にあるってことだと思う。つまり「何もできない」という無力感に耐えられないんだよ。自分が何かをしたり言ったりしてあげられるって日頃から思ってて、それほど「悲惨」ではない人には実際に「してあげられた」って満足してるんじゃないか。

それこそが昨夜話題になっていた「治療者が患者を使って自分を満足させる」行為だと私は思うけどね。

私たちは患者にどんなに責められても叱られても「話を聴く」以外のことは出来ないのに。

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私は臨床の入り口が依存症とか、広い意味での倒錯の分野だったから、基本的なスタンスとして「治療者無力」というのは叩き込まれた…っていうと誰か厳しい指導者がいたみたいだけど「そこが肝なんだな」と最初に学んだところがある。彼らの万能感に巻き込まれると、それを投影されてこっちも万能的に応えなければならないような、とても強い圧が掛かるからね。

で、それに巻き込まれて万能的に何とかしてあげようとすれば、実際にはそんなことは絶対に不可能なので、互いに自滅せざるを得ないところに追い詰められるのがオチなのよ。

私たちがどれだけ無力であるのかということを、どんなに何を万能的に求められても、何も応えられない木偶の坊でしかないのだということを、理解してもらうのが一番大事なプロセスだと私は思ってますよ。

それにしても、クライン派はブランク・スクリーンって、本当に酷い“風評被害“だよなぁ。

昨日の論文で、精神分析は虐げられてきた悲劇の殉教者的な言い回しに「いやいや、虐げられただけではなく、酷いこともたくさんしてきたでしょ」みたいな話したけど、クライン派は分析の中でもなんか偏見の目で見られて虐げられていると私は思うなぁ。

皆んなちゃんとクライン派の本とか論文とか読んだ上で言ってるのかなぁ。

私が一番興味があるのは、ひたすら「本当のこと」(臨床的には外的現実ではなくて、心的現実としての本当のこと)。

だから、「うわぁー酷い目に遭って可哀想!私が何とかしてあげたい!」とか、「煩いなぁ被害者ポジションでギャーギャー。相手のことは考えないのかよ」とか、もし自分が思ったとして、それも含めて、相手がそうしている(そのように私には見える)ことも、私が(心の中で)そういう反応をしていることも含めて、「何でこんなことが起きているのか?その奥には何があるのか?」「何で私たちは今こんな風な気持ちで互いに向き合っているんだろう?」って考え続けるのが自分の仕事だと思っているし、そこには間違いなく既に自分が抜き差しならない状態で関わってしまっていることへの覚悟みたいなのがある。

相手が訴えたり怒ったり何かして貰いたがっている相手は、他でもない私で、私はもうそこから逃げられない場所にいるんだから。

そこで何かしてあげて良い人ポジションに逃げたり、説教始めて撃退してしまったり、もちろん物理的に逃げてしまったり、したら、それはやはり職務放棄だとは思わざるを得ないなぁ。悪いけど。少なくとも私はそういう人の面接は受けたくない(以前に私が面接を受けるのをやめさせて貰った有名な先生には、私はそういうものを感じてしまった)。

そこから物理的にまたは心が逃げ出してしまったり(同情する良い人ポジションとかに)、実際にアクティングアウトして、本当に万能的に助けてしまいたくなったとしたら、それはおそらくセラピストは、その相手の、現実の親(きっととても万能的で、…ってことは理想的万能的に応えられない時にはその人の前で心ここに在らずになっていた親)と同じことをしてしまっているということだと思う。

完全に実在の親を再演している状態なんだと思うな。私は絶対にやらないとは思わないけど、もし自分がやったとしたら、まさにその状態なんだと思う。

少なくとも、分析的な文脈ではそう考えると思う。

実は昔々、ある結構有名な女性のセラピスト(既に故人)がクライエントの希望に応えてその人と寝てしまったことがあるという話を、その人の近くにいた人から聞いて仰天したことがある。男性セラピストでは残念ながら時々起きる、本来絶対に許されない不祥事だけど、女性セラピストではかなりレアな話だと思うんだけど。

「満たさない」のが私たちの仕事。

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