「我々動物の文明が大きな技術発達を起こした理由として、カルスト地帯で見つかった絶滅種『思念樹』を外すことはできないだろう。現在では特殊な菌類のコロニーではないかと推測されている思念樹は、一見すると岩の塊にしか見えない。その真価がわかったのは、統一歴前400年ごろである。」「当時、散逸しそれぞれが独自に発達を遂げていた各種族の文明は、互いに干渉しながらも密な交流はなく、部分的に合致した語彙を用いた不完全な言語コミュニケーションが行われていた。とあるきっかけによって思念樹が作用し、各種族の言語を相互に翻訳したことは、我らの文明の革命となった。」
「思念樹は個体数こそ少なかったが、様々なカルスト地帯に少数ずつ生えており、更に、現在では全球的な菌糸の繋がりとされる効果によって遠方との会話もできた。言わば現代で言う翻訳機や通話機のような能力があり、最後の株が死滅するまでに、我々は統一言語を作ることができた。」