イン・イーシェン「鰐の王子さま」(井上彼方、紅坂紫編『結晶するプリズム』)。象徴の散りばめられ方が好ましく、(訳題ともあいまって)ページ数以上の読みごたえを感じさせる寓話的一作として仕上がっている。「剥き卵のようなわたしの心はどこ」という呼応の声に魅力があるとここは言い切りたい。本作にはアラバスターの色を放射する白い鰐が登場するが、白は清浄と同一視されるだけではなく、アルビノのような「異常さ」ともときに重ねられてきたのではないか。つまるところこれは解放の寓話なのだ。
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