『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリデイ』
この日本語のサブタイトル、不要な気がする…。
数日間反芻していて、とにかく良かった。
歴然とした格差と不公平が立ちはだかる時代の学校の風景、すでに胸が痛い。
エリート寄宿学校での生徒と教師と親のたたかいといえば『今を生きる』であり、
エリート寄宿学校のクリスマス休暇といえば『セント・オブ・ウーマン』で、
そういった過去の傑作は意識されているんだろうか、と気になった。
子どもの気持ちに真摯に向き合う親は、非を認めてヘリコプターで迎えに来る。
真摯に向き合わない親は、最後までとんちんかんで、子どもを追いつめる。
ポール・ジアマッティ演じるハナム先生は、成績評価は厳しいけれど公平で、ハラスメント的なことはしないし、別にそこまで偏屈だとは感じなかった。私の好みの問題だと思うけれど。
それよりアンガスの方がマズイと思う。実際に精神科にかかって服薬中だし、ずけずけと人が不快になることを言ってしまうあたり、なにかの特質がある。それは父親の遺伝なのかな、とも思う。あの病的な表情と、大人に対する横柄な態度と、クリスマスにはしゃぐ姿のちぐはぐさが、なんともいえない。(続
ボストンの博物館でのやりとりは、とても良かった。
今を説明するために歴史を学ぶ。
ハナム先生の秘密も、アンガスの秘密も、胸が締めつけられる。
真摯に学問を修めたい生徒が、金持ちの出来心のせいで学問の道を閉ざされる。
学問を修めたくても修められず、金持ちの道楽息子たちの代わりに戦場に送られて死んだカーティスを思うと、メアリーもハナム先生も、目の前の「放蕩息子たち」がどんなに憎いだろうか。どんなに世の不公平を恨んだだろうか。メアリーの静かな表情の演技が、めちゃくちゃ上手。
そして経済的に恵まれていても孤独と絶望に追いつめられるアンガス。最後の校長室で、親の話を聞いたときのハナム先生のため息に、号泣。
校長が自慢して置いていた高級酒、必ずどこかで出てくるだろうと思っていたら(笑)。
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