『荒馬と女』はカウボーイを自称するゲーブルやイーライ・ウォラックが、危険なロデオや野生馬を捕獲してドッグフード業者に売るくらいしか自活の道がないという先行きのなさに胸が塞ぐし、野生馬も絶滅寸前で10頭もおらず、捕獲に反対するモンローが「男の世界のルールがわからない異分子」として描かれたあと、モンローに共感して野生馬を解き放つモンゴメリー・クリフトではなく馬と一対一の戦いを繰り広げたあとに再度解き放って強さと(手前勝手な)優しさを同時に見せたクラーク・ゲイブルがモンローを得る、という結末で、従軍経験・家族問題・ロデオでの心身の負傷など、それぞれの男性の傷の描き方、俺を癒してくれ選んでくれといいながら「男の世界」からは排除しようとする、60年代初頭の男性性のお手本てんこ盛りみたいな映画で逆にすごかった。セルマ・リッター演じるモンローの世話を焼く年配の婦人、離婚した後も親友と結婚した元夫と3人で仲良くしてて、というエピソードに、マリリンはこの人と仲良く暮らすといいよ!てかこっちで話膨らましてくれよ……と思いました。