引用元の投稿で紹介した朝日新聞の記事に対して、トヨタ会長発言を擁護する論調の記事が出ている。
https://fedibird.com/@AkioHoshi/112817589230211564
トヨタ会長、海外移転→日本脱出を示唆…国交省からのイジメ的行為に失望
https://biz-journal.jp/company/post_382372.html
なかなか興味深い内容なので紹介したい。まず、記事の「おかしな点」を見ていきたい。
(1) 記事のアジェンダ(議題の設定)がおかしい
"豊田会長の発言の真意は何か。また、もしトヨタが主要拠点を海外に移転させた場合、日本経済にどのような影響をおよぼすのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。"
いやいやいや……
今回はトヨタ会長の発言が失言として批判されているのだから、ここはまず「トヨタ会長は、どうするのが良かったのか」を論じる局面ではないだろうか。
(2) 対象読者の想定がおかしい
記事は、自動車業界とトヨタファンだけが読者であるかのような書き方。トヨタに中立あるいは批判的な一般読者がいることが、想像の範囲外にある。
記事の記述を見ていこう。
"不適切な点が発覚したのは6項目のみで、これは不正というよりは『ミス』"
"国交省が『不正』だとして騒いでメディアの報道に火をつけて、ことさらに事を大きく"
(続く [参照]
"豊田会長は不正発覚後の会見で、国の認証制度について時代に合わない基準や不明確なルールが多く現場に負担がかかっているとして、制度改善の必要性を主張するなど、国交省に逆らう"
"国交省はトヨタに対して厳しい姿勢"
"トヨタはいまだに(生産再開の)メドは立っておらず、国交省からイジメのような扱い"
この記事、トヨタ会長発言を擁護しようとして、結果的に後ろから弾を撃ってしまっている。
(3) 会長はどうするべきだったのか
企業のリスク管理の観点では、企業が不祥事、問題を起こしている局面で経営者が企業への追及を嫌がるかのような発言は悪手。
問題への批判を受け止め、株主、顧客、従業員、取引先らに「トヨタは問題に対して真剣に取り組んでいる」とメッセージを送ることが、不祥事に直面した経営者として最低限の務め。
トヨタの会長は高額の役員報酬(2024年3月期に16億2200万円)を得ているが、それは経営者として企業を守り支える振る舞いや発言に対する責任の対価でもあるのだ。
(4) 感想
記事から読み取れることは「トヨタ会長は不正問題で国交省との対決姿勢を見せ、両者の関係が悪化したこと」。だとすれば、経営者としての失点である。
(続く
もし国交省がおかしいのなら、堂々と証拠を挙げてロジックを構築して批判すればいい。当てこすりや愚痴で対抗すべき局面ではない。
今回のトヨタ会長発言は、株主、顧客、従業員、取引先らにネガティブな材料として——「日本には強い企業が必要なのだから、多少の不正、不祥事は許されて当然である」といわんばかりの、道徳的真剣さを欠く独善的で誤ったメッセージとして受け取められるリスクを考慮していない。
もし「日本経済にトヨタが必要」なのだとして、それが不正問題を帳消しにすることはない。
もし「日本を出て行く」といった話題をメディアの前で漏らすことで世論を味方につけ国交省に対抗しようとしたのなら、非常に間違ったやり方だと評さざるをえない。
@AkioHoshi As with Toyota, overseas scandals tend not to be reported by the Japanese media. The EE Times was the only one to report on Toyota's 2013 settlement in Japanese.
https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/1311/11/news072.html